亡くなる直前に引き出した現金について 2018.2.8
被相続人(亡くなった方)が、亡くなった日時点に所有していた財産は、原則としてすべて相続税の課税対象となります。
預貯金であれば亡くなった日時点の残高が評価額となります。(定期預金の場合、期間に応じた利息計算をします。)
そうすると、亡くなる直前に預貯金を全て引き出してしまえば、亡くなった日時点の評価額は0円となり、相続税は課税されないのでしょうか?
実務上は被相続人が亡くなった時点では引き出された現金が、基本的にまだそのまま手元に残っていたものと考えます。
1,000万円の預貯金の内、800万円を亡くなる直前に引き出したとすると、亡くなった日現在の預貯金の残高は200万円ですが、直前に引き出した800万円は現金で保有している事となり、預貯金200万円、現金800万円の合計1,000万円が相続財産という事になります。
もちろん引き出した金額のうち、実際に生活費等で使用している事もあるでしょう。その場合は、使用している分については相続財産として足し戻す必要はありません。
しかし、ここで注意をしておきたいのが、亡くなる直前に引き出した現金を相続が発生した後に葬儀費用や病院の支払い等に使った場合です。
相続税の計算上、葬儀費用や病院に支払った入院代等は、相続財産から債務控除として控除する事が出来ます。
もし直前に引き出した現金を葬儀費用や病院の支払いに使ったとして、その現金を相続財産に含めなければ、預貯金から引き出した現金も相続財産から減少し、葬儀費用等に支払った費用も債務控除され、二重に引いてしまっている事になります。
葬儀費用や病院の支払いの為に前もって預貯金を引き出される方は多くいらっしゃいますが、相続税を計算するうえでは、引き出した現金は課税対象となりますので注意が必要です。
相続税の申告後に税務調査が行われた場合、税務署は被相続人が亡くなる直前の預貯金の動きを見て、現金が引き出されているかどうかを必ずチェックします。亡くなる直前に多額の預貯金を引き出している場合は、相続税の申告から現金がもれないように注意しましょう。