平成30年度税制改正 〜 小規模宅地等の課税価格計算の特例② 2018.6.13
前回に引き続き、今回も小規模宅地等の特例の改正についてです。 平成30年度改正により「貸付事業用宅地等」についても適用要件が厳格化されることとなりました。 小規模宅地等の特例の対象となる貸付事業用宅地等は簡単にいうと賃貸住宅や貸駐車場などの敷地(亡くなった方や亡くなった方と生計を一にしていた親族の事業用の宅地に限られます)です。 その宅地等を相続や遺贈で取得した人が、申告期限まで「事業を継続すること」「その宅地等を保有していること」の要件を満たせば、200㎡までの面積に対応する部分について、相続税の課税価格計算上その敷地等の評価額の50%を減額することができます。 通達ではその不動産賃貸業の規模については問わないこととされていました。 しかし、近年、相続開始直前に現金などの金融資産を一時的に不動産に変えるなどして、小規模宅地等の特例を受けるという手法が問題視され、今回要件が厳格化されたようです。 税制改正大綱に以下のように記されています。 貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く)を除外する。 まずは、カッコ書きを飛ばして読んでみると相続開始前3年以内に新たに賃貸事業の用に供した土地についてはダメと言っています。 極端な例ですが、改正前であれば亡くなる1週間前に購入した貸マンションの1室(もちろん入居者がいるという前提です。)であっても、申告期限まで事業・所有の継続要件を満たせば受けることが出来ました。 人がいつ亡くなるかは分からないので3年が長いかどうかは一概には言えないですが、期間に制限が設けられました。 では、先ほど飛ばしたカッコ書きの内容ですが、相続開始前3年よりも前からずっと事業的規模で事業をしていた人が相続開始前3年以内に取得したものについては3年縛りのルールは大目に見ましょうと言っています。 ここで気になるのは事業的規模という言葉です。相続税の世界では事業的規模について特に定められているわけではありませんので、これは所得税の通達から準用されるのではないでしょうか。いわゆる5棟10室基準と呼ばれる判断基準です。今のところ明文化されていません。 それなりの規模で不動産賃貸業を営んできた人の場合は「一時的に金融資産を不動産に変える」という意図はないだろう、と判断されるということでしょう。 なお、この改正は平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産についての相続税に適用されます。 ただし、経過措置が設けられており、平成30年3月31日までに貸付事業の用に供された他宅地等については、今回の改正による制限は適用されません。 3回に渡り「小規模宅地等の課税価格計算の特例」について、概要と平成30年度税制改正の内容をご紹介してきました。 税制は毎年変わります。特例の適用を受けるためには、要件を1つでも満たさなければ受けることは出来ません。 今後もその他の特例に制限が入る可能性は十分ありますので、相続税対策を検討中の方はお早めに実行に移すことをおすすめします。