新型コロナウイルスの影響による消費税の課税選択の変更に係る特例 2020.11.17
新型コロナウイルスの影響により、税務上の措置として申告・納付期限の延長や納税猶予の制度が設けられましたが、今回は消費税の届出に関する特例を紹介していきます。
特例の対象になるのは、新型コロナウイルス感染症等の影響により、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち任意の1か月以上の期間の事業としての収入が著しく減少(前年同期比概ね 50%以上減少)している事業者です。
この収入には、持続化給付金をはじめとした各種給付金などの臨時的な収入や、事業者が収入すべき対価の額を減免又は猶予した場合の減免額又は猶予額を含めません。
通常、免税事業者が課税事業者になることを選択する場合、適用を受けようとする課税期間が始まる前日までに届出書の提出が必要です。
また、課税事業者を選択していた事業者が選択をやめよう(免税事業者に戻ろう)とする場合の手続も、免税事業者に戻りたい課税期間が始まる前日までに届出書を提出しなければなりません。
しかし特例の対象となる事業者は、税務署長の承認を受けることで、特定課税期間(新型コロナウイルス感染症等の影響により事業としての収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間をいいます)以後の課税期間について、課税期間の開始後であっても、課税事業者を選択する(又はやめる)ことができます。
特例の承認を受けようとする場合、原則として特定課税期間の確定申告期限までに、承認申請書を税務署に提出してください(特例で申告期限の延長を受けることもできます)
承認申請書と一緒に、新型コロナウイルス感染症等の影響により事業としての収入の著しい減少があったことを確認できる書類(損益計算書、月次試算表、売上帳、現金出納帳、預金通帳のコピーなど)と消費税課税事業者選択(不適用)届出書も提出するのを忘れないでください。
また、課税事業者をやめる場合には、基準期間の売上高が1,000万円以下であること等の免税事業者の要件を満たしていないといけないので、注意してください。
選択により課税事業者となった場合は、2年間は課税事業者として消費税の申告納付を行ってからでなければ免税事業者に戻ることはできません。
しかし、この特例により課税事業者を選択する(又はやめる)場合、2年間の継続適用要件は適用されません。
先述の創設された特例とは別に、もともと消費税法第37条の2において、「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合」の特例が設けられています。
この特例により、新型コロナウイルス感染症等の影響による被害を受けたことで、
・通常の業務体制の維持が難しく、事務処理能力が低下したため簡易課税へ変更したい
・感染拡大防止のために緊急な課税仕入れが生じたため一般課税へ変更したい
といった事情がある事業者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けることにより、課税期間開始後であっても、簡易課税制度を選択する(又は選択をやめる)ことができます。
この特例を受けるには、新型コロナウイルス感染症等の影響による被害がやんだ日から2月以内に、承認申請書と消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
先述の課税選択の変更に係る特例と違い、収入を証する書類の提出は不要です。
なお、被害のやんだ日がその申請に係る課税期間の末日の翌日(個人事業者の場合は、その末日の翌日から 1 月を経過した日)以後に到来する場合には、その課税期間に係る確定申告書の提出期限(国税通則法第 11 条の規定の適用により申告期限等の延長を受けている場合にはその延長された期限)となります。
簡易課税の選択を受ける場合には、基準期間の売上高が5,000万円以下でなければいけないので、注意してください。
原則として、簡易課税を選択した場合は、適用後2年間継続適用しなければなりません。
しかし、この特例により簡易課税制度を選択する(又は選択をやめる)場合は、2年間の継続適用要件は適用されません。
新型コロナウイルスの影響によって想定していなかった事態となり、届出をしていた消費税に関する選択について、変更したほうが有利になる事業者もいらっしゃるでしょう。
これらの申請を失念していたことを理由とした更正の請求(事後の特例の適用)は認められないので、提出期限が到来していない事業者の皆様は、申請をした方がいいかどうかの見直しをしてみてください。