時価のない財産を評価すること 2017.10.24
今回は相続税・贈与税における取引相場のない株式の評価についてのお話です。 「取引相場のない株式」とは、これは通達の言葉ですが、なんとなく字面で「非上場の株式なのかなぁ」と想像することは出来ると思います。 上場されている株式の場合は、取引時間内であればインターネットで1秒単位で時価を知ることも容易に出来ます。 しかし、「取引相場のない株式」と言っているのですから、何をよりどころに時価とすべきでしょうか?過去の取引事例も通常はないでしょう。 では、どんな人が取引相場のない株式を所有しているでしょうか? 一概には言えませんが、親族経営の会社の株主の方などが多いです。 通常中小規模の会社の場合には自分の会社の株式が赤の他人や会社にとって都合の悪い人に渡ることがないよう譲渡制限(誰にでも売ったりあげたりすることを制限すること)が付けられています。このことからも分かるようにやはり取引相場のない株式は、そもそも売買されることを前提としていないため、今売ったらいくらかという時価の概念は矛盾してしまうように思います。 ただし、やはり相続税法においては相続又は遺贈(贈与の場合は贈与)により取得した財産を金銭的な価値=時価に見積もって評価しなさい、と定められている以上評価せねばなりません。 相続等や贈与で株式を取得した株主が、その会社の経営支配力を持っているかどうかで原則的な評価方法と特例的な評価方法に分かれます。 原則的な評価方法となる場合は次に会社の総資産の価額・従業員数・取引金額などから会社の規模を大会社・中会社・小会社の3つに区分します。 会社がどの規模の会社であるかによって「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」のいずれか又は両者を折衷するような形で財産の評価額を計算します。 「類似業種比準方式」はかみ砕いて言えば、上場している同業他社の株価に比準して評価する方法です。 「純資産価額方式」は会社の財産の額から負債の額を控除した純資産を基に計算する方法です(かなり端折っています・・・)。 特例的な評価方法は配当還元方式といいます。その株式を所有することで1年間に受け取ることが出来る配当の金額を基に、その元本たる株式の価額を算定する方式です。 配当還元方式の場合は、配当金の支払通知書が手許にあると評価は楽です。 たまに、街やテレビなどでもよく見かけるような会社の株式を所有されている方もおられたりして、「え?この会社、上場していないの?」と思うことなんかもあります。 計算に必要なデータがお客様の手許にない場合に、何社かそういった会社の担当者の方に問い合わせる機会がありましたが、みなさんすごく感じの良い方ばかりでした。余談ですが。 かなり簡単に取引相場のない株式についてお話ししました。 会社の事情によってはまた別の評価方法が適用される場合もあります。 取引相場のない株式の評価は、雲を掴むような話にも思えます。 取引相場のない株式は売却することが容易ではないため、評価額が高くなると相続税の負担も大きくなります。 事前に打てる対策はないか、相続対策に詳しい専門家に一度ご相談してみてはいかがでしょうか?