民法改正による配偶者居住権について 2020.5.12
40年ぶりの民法の相続法改正により、「配偶者居住権」が令和2年4月1日から施行されました。この改正は高齢化社会を背景とした配偶者の権利の拡大となっています。
配偶者居住権とは故人が所有していた居住用建物において、配偶者が終身又は一定期間、無償で居住することを認める権利です。
成立要件は以下に該当する場合です。
1、被相続人(故人)の配偶者であること
2、相続開始時に被相続人の所有していた建物に居住していること
3、遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判により取得したこと
≪具体例1≫
相続人:配偶者と子ども一人
被相続人(故人)の財産: 合計6,000万円(自宅3,000万円、預金3,000万円)
配偶者は住み慣れた家をそのまま相続するパターンが多いかと思います。
ただ、法定相続通りに遺産分割すると配偶者は自宅の3,000万円だけで配偶者自身に財産がなければ今後の生活はとても不安定なものとなります。
≪具体例2≫
相続人:配偶者と子ども一人
被相続人(故人)の財産:合計5,000万円(自宅3,000万円、預金2,000万円)
相続人間の関係性が良好であれば、揉めることなくお互いの生活環境に配慮して遺産分割をすることが出来るかもしれません。
しかし、両者の意見が折り合わず、2,500万円ずつ法定相続することとなった場合、財産預金は2,000万円ですから、配偶者は住み慣れた自宅を売却しなければいけない可能性も十分に出てきます。
そうなれば、高齢であることも多い配偶者は遺産問題だけでなく、新しい住まいの確保という重荷を背負うことになります。
そこで!
配偶者居住権を設定すると建物と土地は下記のような権利に分けられます。
①配偶者居住権
②居住建物の所有権
③敷地の利用権
④居住建物の敷地となる土地及び土地の上に存する権利等の所有権
例えば、配偶者が①③を取得し、子が②④の権利を相続したとします。
≪具体例1⇒配偶者居住権を設定した場合≫
自宅3,000万円のうち、仮に配偶者居住権の価値を1,500万円、その他の権利を1,500万円とします。
配偶者:配偶者居住権1,500万円、預金1,500万円の合計3,000万円
子 :不動産にかかるその他の権利1,500万円、預金1,500万円の合計3,000万円
≪具体例2⇒配偶者居住権を設定した場合≫
自宅の各権利を具体例1と同条件とすると
配偶者:配偶者居住権1,500万円、預金1,000万円の合計2,500万円
子 :不動産にかかるその他の権利1,500万円、預金1,000万円の合計2,500万円
このように配偶者は住み慣れた家に住み続けることが出来、当面の生活費の心配も必要なくなります。
配偶者居住権の評価方法については、個々の事案に応じて評価額を算出していくことになります。
どのように評価するかにより、配偶者が居住権の他にどの程度の財産が受け取れるかが決まるため、専門家への事前相談が大きな分かれ道となります。
また、この配偶者居住権はその配偶者のみに認められる権利のため売却することは出来ません。
配偶者が死亡した際に権利は消滅し、その他の権利を所有していた者がすべての不動産権利を所有することになります。
今回の制度以外にも相続には上手に活用するために気を配らなければならない事柄がたくさんあるため早めにご相談下さい。