生前贈与の活用と注意点 2017.6.5
平成27年に施行された相続税の基礎控除額の縮減に伴い、相続税の課税対象となる人が増加しました。同時に相続税に対する関心も高まっており、将来、自身や家族に相続が発生した場合に相続税がかかるのかどうか?かかるとすればどれぐらいなのか?というご相談も増加しています。 今回は相続税の節税対策の一つとして、「生前贈与」と、その際の注意点についてご紹介します。 贈与税は1月1日から12月31日までの1年の間に、贈与により受けた財産の価額が110万円を超える場合、財産の贈与を受けた人が申告・納税を行います。(相続時精算課税制度を選択していないものとします) 贈与税の基礎控除額(=1年間に110万円)の範囲内で贈与をすれば、贈与税を負担することなく財産の移転ができますし、相続税の対象となる財産が減少し、相続税の節税につながります。 また、前述の贈与税の基礎控除額を超える額の財産を贈与して、贈与税を支払ったとしても贈与税の負担率が将来の相続税の負担率よりも低ければ、節税効果はより一層高まり、財産の早期移転が図れます。 相続税法には、「生前贈与加算」という規定があります。 相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人(亡くなられた方)からの贈与により財産を取得していた場合、その財産の価額を相続税の計算に含めなければいけません。 逆を言えば、相続又は遺贈により財産を取得しない人は、この生前贈与加算の規定の対象外です。 つまり、相続又は遺贈により財産を取得しない人(例えば、例外的なケースを除きますが、推定相続人の配偶者や孫)に贈与すれば、より効率的に相続税の課税対象となる財産から減らす事が出来ますし、贈与する人数を増やしていけば、より節税効果が期待できます。 もちろん推定相続人に対しての贈与も3年より前のものについては加算の対象にはなりませんので、早期に財産を移してしまえば相続税対策に有効です。長生きすることも相続税の節税につながると言えます。 しかし、生前贈与には思わぬ落とし穴がたくさんあるので、注意が必要です。 例えば、子供名義の口座に親が勝手に贈与のつもりで振り込んでいても、子供がその口座の存在を知らず、通帳や印鑑の管理などを親がしている場合などには贈与とは認められず、名義預金として、相続税の課税対象となる財産として扱われることがあります。 また、10年間に渡って100万円ずつ合計1,000万円を贈与した場合でも、1,000万円の贈与を分割で支払ったとみなされ、1,000万円の一括贈与と判断され贈与税を課税されるケースもあります。 生前贈与は、どれくらいの金額をどの期間で贈与するのが効果的か、しっかりと考えてから実行する必要があります。まずはご自身の所有している財産の全貌を把握した上で検討しましょう。 せっかく贈与をしても結果的に余計な税金を払わなければならないという事もあり得ますし、中には相続税の節税を意識するあまり、生前贈与を多額にやり過ぎてしまい、自身の生活が立ち行かなくなるという方もいらっしゃいます。 贈与する人も贈与を受ける人も笑顔で暮らせるように、まずはお気軽にご相談ください。