相次相続と小規模宅地等の特例の3年縛り 2019.7.16
平成30年度の改正で、相続開始前3年以内に被相続人が新たに貸付の用に供した宅地については原則、小規模宅地等の特例対象宅地等には該当せず、小規模宅地等の特例を適用する事ができなくなりました。
また、平成31年度改正でも相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等についても同じく、原則この特例を適用する事ができなくなりました。いわゆる3年縛りの規制です。
簡単にいうと、亡くなる前3年以内に不動産貸付や事業を始めた不動産については、相続税を減額できないという事です。
相続税を減らす目的だけで亡くなる直前に賃貸用不動産を購入したり、駆け込みで事業を始めたりという本来の小規模宅地等の特例の趣旨と違う事をする人には特例は受けさせませんよということです。
亡くなる前3年以上前から不動産賃貸業を事業的規模で営んでいる場合や、事業の用に供されている減価償却資産の価額が特例を受けようとする宅地等の価額の15%以上である場合などは対象外となり、従来どおり小規模宅地等の特例を利用する事ができます。
では相続又は遺贈で取得した宅地等を引き続き事業の用に供していた場合で、取得後3年以内に新たに相続が発生した場合はどうなるのでしょうか。
これについては、平成31年度の税制改正で、特定事業用宅地等について、「被相続人が相続開始前3年以内に開始した“相続”又は“遺贈”で取得した宅地等を引き続き事業供用していた場合は、“新たに事業の用に供された”宅地等に該当しないものとする」とされました。
そして、「貸付事業の用に供されていた宅地等にも準用する」とされました。
そのため、貸付事業用宅地等についても被相続人が相続開始前3年以内に相続で取得した宅地等を引き続き貸付事業の用に供していれば、“新たに貸付けの用に供した宅地等”には該当しない事になります。
例えば、貸付事業をしていた父が亡くなり(第1次相続)母がその貸付用の不動産を取得して引き続き貸付事業を行っていたが、父の相続の2年後に母が亡くなり(第2次相続)息子がその貸付用の不動産を取得して引き続き貸付事業を行っていたとします。
この場合は父の相続開始前3年超その貸付を行っていれば、仮に母が父の相続後3年以内に亡くなった場合でも、3年縛りの規定の適用はなく、小規模宅地等の特例を受ける事ができます。
実際には、母は自身の相続開始前3年以内に貸付事業を開始していますが、母から息子への2次相続でも特例の対象となります。
この改正は平成31年4月1日以後に相続や遺贈で取得する財産の相続税に適用されますが、平成31年4月1日前に生じた相続も同様の取り扱いになります。