相続人が海外に住んでいる場合の相続手続き 2018.10.5
皆さんの周りにも、海外赴任や海外での移住生活を送っている方がいらっしゃると思います。 以前、このブログで外国籍の相続人がいる場合の手続きについてご説明しましたが、今回は日本国籍の相続人が海外へ移住し、日本に住民登録されていない場合の相続手続きについてご説明します。 1.「居住者」と「非居住者」の区分 「居住者」とは国内に住所を有し、又は、現在まで引き続き一年以上居所を有する方をいいます。住所とは生活の本拠をいい、住まいや職業などから客観的事実によって判断されます。 「非居住者」とは「居住者」でない方をいいます。 2.「印鑑証明」と「署名証明(通称:サイン証明)」について 遺言書がなく相続財産の不動産や金融資産などの名義変更・解約などを行うには、共同相続人による遺産分割協議書が必要となります。相続人が「居住者」である場合は、署名した方が本人であることを「印鑑証明」によって対外的に証明しますが、相続人が「非居住者」の場合はどうなるんでしょうか。この場合は、「署名証明」によって本人と証明します。 居住者は、住民票に登録された住所の市区町村役場にて直接本人が印鑑(いわゆる「実印」)の登録申請を行い「印鑑登録証明書(氏名・生年月日・住所が記載)」を交付してもらいます。 その登録された印鑑を用いて契約を行うことにより、本人が契約したことを証明できます。 非居住者の場合、「印鑑証明」の制度がないため「署名証明」となります。 以下は、アメリカの在ニューヨーク日本国総領事館における署名証明の取得要綱を具体例として参照しました。 非居住者の居住する国にある日本大使館又は領事館へ直接本人が出向き、署名及び拇印の証明申請を行い、「署名証明書(氏名・生年月日が記載)」を発給してもらいます。 日本から送られた遺産分割協議書とパスポートを持参し、必要事項を記入した申請書・手数料とともに領事館の窓口へ提出すると、原則、即日発給されます。 注意する点は、署名及び拇印を領事館担当者の面前で行う必要があることです。予め署名されている書類の証明はできません。 署名証明書には2種類の形式があります。「貼付型」は契約書等に署名証明書を貼り付け拇印にて割印する形式、「単独型」は単体形式の署名証明書です。遺産分割協議書には、より信頼度の高い「貼付型」をお勧めします。 もし、日本に一時帰国することがある場合には、国内の公証役場にて貼付型の署名証明書を取得することも可能です。 なお、金融機関によっては遺産分割協議書に加え金融機関所定の書類を手続きに用いるなど、 取り扱いが異なる場合があるため、事前に確認しておく必要があります。 3.将来の相続手続きについて 上記のように、非居住者には負担がかかる相続手続きとなります。それを解消する方法としては、国内にいる遺言執行者を指定した「遺言書」を作成されることをお勧めします。これによって、遺言執行者の署名・捺印により相続手続きが可能となる場合があります。 遺言書を公正証書で作成することをご検討される方は、オアシス相続センターへご相談ください。