相続分のないことの証明書とは? 2017.10.16
「相続分のないことの証明書」というのをご存じでしょうか。「特別受益証明書」「相続分不存在証明書」ともいわれていますが、これはどのようなものでしょうか。 相続人のうちに相続分を超える生前贈与・遺贈を受けた特別受益者がいる場合、当該相続人が「相続分のないことの証明書」を作成することで、その者を除く相続人で遺産分割協議や相続登記をすることが出来ます。遺産が不動産だけである場合などに使われる事があります。 例えば相続人が2人いる場合、通常は財産を誰が取得するか遺産分割協議書を作成し、2人分の署名押印、印鑑登録証明書を添付します。 しかし、相続人2人のうち1人が、「被相続人(亡くなった方)から生前に相続分に等しい贈与を受けているので被相続人の死亡による相続については、受けるべき相続分がない」というような内容を書面にし、署名押印し、印鑑登録証明書を添付します。そうすれば、相続人2名分署名押印入りの遺産分割協議書を作成することなく、相続登記が可能になります。贈与された財産の種類や価額、受贈年月日は記載する必要はありません。 しかし「相続分のないことの証明書」を作成する場合は注意が必要です。 署名押印してしまうと、その不動産の相続を放棄したことになり、相続権を失ってしまいます。相続放棄のつもりで署名押印したとしても、この「相続分のないことの証明書」では被相続人の借金などの負の財産が免除されるわけではありません。本来受けられるはずの権利がないと証明しているだけですので、被相続人の債務(借金)があれば、支払い義務は当然に引き継ぐこととなります。 相続放棄をする場合は、また別で家庭裁判所に申述をする必要があります。相続放棄の手続きが面倒だからという理由で「相続分のないことの証明書」を作成する場合もあるようですが、後々トラブルになる可能性もあります。 遺産分割協議に参加したくない、相続放棄の手続きが煩わしい、他の相続人に署名押印を求められたから、という安易な理由で「相続分のないことの証明書」に署名押印してしまうのは大変危険です。 遺産分割の方法として、とても有効である反面トラブルの原因にもなりますので、さまざまなリスクを考え、必要ならば専門家を交えて作成することをお勧めします。