相続放棄があった場合の死亡保険金の評価方法について 2021.9.27
被相続人が保険料を負担していて、被相続人の死亡により支給を受ける保険金(以下「死亡保険金」という)を受け取る人が相続放棄をしていた場合、この相続人は死亡保険金を受け取ることができるでしょうか。
答えは「受け取ることができる」です。
なぜならば、民法上、死亡保険金は受取人固有の財産だと考えられており、相続財産ではなく、死亡保険金は相続放棄の対象とみなされないからです。
しかし、死亡保険金は税法上では「みなし相続財産」となり、相続人が受け取った時はもちろん、相続放棄している人が死亡保険金を受け取った場合でも、受け取った死亡保険金に対して相続税が課税されます。
死亡保険金は相続税の課税対象となりますが、この死亡保険金の受取人が「相続人」である場合、全ての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
では、法定相続人が2名おり、法定相続人の1人が相続放棄した場合、非課税限度額はどう計算されるのでしょうか。
この場合、非課税限度額は500万円×2名=1,000万円となります。
「法定相続人は1人になったので、500万円ではないのか?」と考えるかもしれませんが、相続放棄した人は、「相続人」ではありませんが、「法定相続人」であることには変わりがないため、法定相続人として数える必要があります。
次に、相続放棄した人が死亡保険金を受け取った場合、非課税限度額を利用できるでしょうか。
答えは「非課税限度の制度を利用することはできない」です。
非課税制度は「相続人」である場合に利用できる制度であり、上記の通り、相続放棄した人は「相続人」でないためです。
また、相続税の計算の中で「2割加算」といわれるものがあります。
これは
・被相続人の1親等の血族
・配偶者
・代襲相続人
以外の者に相続税が発生した場合は、2割増しの相続税を支払うというものですが、同じようなケースで死亡保険金を受け取った場合でも、2割加算の対象となる場合とならない場合があります。
それは子が相続放棄をした場合と、子の代襲相続人である孫が相続放棄をした場合です。
前者の場合は2割加算の対象となりませんが、後者の場合だと2割加算の対象となります。
なぜなら、子が相続放棄をしても「1親等の血族」であることに変わりはありませんが、孫が相続放棄をして代襲相続人の権利を放棄すると「2親等の血族」となるため、2割加算の対象となってしまうのです。
このように、相続放棄をした人がいる場合には、注意すべき点がいくつかあるので、気を付けてください。