相続税の債務控除 応用編 2018.11.14
相続税の計算上、一定の要件に該当する相続人又は包括受遺者(相続人等)については、相続又は遺贈により取得する財産の価額から、被相続人(亡くなった方)が残した借入金などの債務の額のうちその相続人等が負担する債務の額を控除することが出来ます。 という出だしで以前「相続税の債務控除」について記事を書きました。 相続税対策でアパートを建てるような場合には、借入金によるアパート建築を前提としていることも多いので、借入金の残額が相続税の債務控除となるというのは分かりやすいでしょう。 住宅ローンであっても、団体信用生命保険付のものは債務控除の対象となりません。死亡と同時に残債を補填するための保険金が支払われるため、正確に言えば、財産(保険金)と債務(住宅ローン)が相殺される形になります。債務だけを控除するわけにはいかないということですね。 住民税や固定資産税はどうでしょうか? 例えばその年の2月1日に亡くなった人の相続税の計算で債務控除を検討する際に、2月1日時点ではまだ住民税や固定資産税の通知書は届いておらず、大体5月又は6月頃に届きます。 住民税や固定資産税は毎年1月1日現在の状況で納税義務者となるかどうかを判断します。固定資産税であれば毎年1月1日の時点で土地や家屋等を所有している場合に納税義務者となります。金額が正式に確定するまでには若干のタイムラグがありますが、通知書の金額でもって相続税の計算をします。 もしも、不動産が2名以上の共有の場合には被相続人の持分に応じた金額が債務控除の対象となります。全額を控除することは出来ません。 所得税については12月31日時点で納税義務が成立しますので、先ほどの例のように2月1日に亡くなった方の場合、前年の所得税の確定申告書を提出しなければならないかもしれません。通常の所得税の確定申告の期限は3月15日までですが、亡くなった人の所得税に関するものについては相続の開始があったことを知った日の翌日から4月以内となり、相続人がその義務を承継します。 もしも、その年の1月分についても確定申告が必要な人であるならば、亡くなった年の前年分と、亡くなった年分の確定申告書を提出することになります。 事業を営んでいた方で消費税の課税事業者であった人は、消費税の申告もしなければなりません。期限などは所得税と同様で相続の開始があったことを知った日の翌日から4月以内です。 次は医療費についてです。 亡くなった日後に支払った医療費が相続税の債務控除の対象となります。 つまり、自分が支払わなければならなかった医療費を支払わないまま亡くなったわけですから、「相続開始の際現に存するもの」として債務控除の対象になります。 例えば亡くなった日の前日に医療費を支払っていたような場合は相続税の債務控除の対象にはなりません。「先に教えておいて欲しかった」という方も中にはおられますが、通常、そのような費用は亡くなった方の銀行口座から引き出して払ったりしているような場合が多いので、結局銀行預金という財産が減っているわけですからそんなに損した得したということにはならないかと思います。 「亡くなった日後に支払った医療費」ということを強調して説明してしまうと、亡くなるより前に支払った医療費の領収書を確認できないことがありますが、実はもう一つ注意することがあります。 もしも、クレジットカードで支払っていたような場合には、亡くなった日よりも前に支払った医療費であっても、カード会社の締め日などの関係で債務控除の対象となることもあります。 次のような例はなかなかないかもしれませんが、亡くなった人の名義のクレジットカードで医療費を支払っていたのですが、カード利用代金はその人の家族の銀行口座から引き落とされていたというような場合です。 この場合には亡くなった人の債務にはあたらず債務控除の対象にはなりません。 領収書がたくさんあって確認するのも大変だ、と言う場合はこちらで判断します。是非一度ご相談ください。