相続税の納税地 2020.2.10
納税地、例えば所得税の場合には、住所地(居所)・事業所所在地の選択適用、法人税の場合には本店所在地と各税法で定められています。
では、相続税・贈与税についてはどのような規定があるのでしょうか。
相続税法第62条第1項には「この法律の施行地にある住所地をもって、その納税地とする」とあります。
また、同条第2項では「この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるものは、納税地を定めて、納税地の所轄税務署長に申告しなければならない。その申告がないときは、国税庁長官がその納税地を指定し、これを通知する」となっています。
贈与税はこの条文通り、納税者の住所地を納税地とすることで問題ありませんが、相続税はどうでしょうか。
相続人が全国各地に居住している場合、一人の被相続人につき、複数の申告書が全国各地の税務署に提出されることになります。
ところが、実際には大半の相続税の申告書は、相続人が連名で、被相続人の住所地の所轄税務署に提出されています。なぜそのようなことができるのでしょうか。
これについては、昭和25年4月1日施行の相続税法附則第3号に、「被相続人の死亡の時の住所がこの法律の施行地内にある場合、相続財産を取得した者の納税地は、当分の間、被相続人の死亡の時における住所地とする」とあります。
この附則によって、相続税の納税地は被相続人の最後の住所地となっているのです。70年もの「当分の間」、いつまで続くのでしょうか。
ただ、この規定にも例外はあります。
被相続人が非居住者であり、国内に住所(居所)がなかった場合には、各相続人が自身の住所地の所轄税務署に申告・納税を行うことになります。
また、相続人も非居住者であった場合には、相続税法第62条第2項の規定通り、自身で納税地を選択し、納税管理人を選任した上で、申告・納税を行うことになります。