相続関係の書類に署名・押印するときには十分に注意を 2020.9.2
相続の手続きでは、様々な書類が必要になり、署名・押印が必要になる書類も多くあります。
その中に、「相続分のないことの証明書」という文書への署名・押印を求められることがあります。
この「相続分のないことの証明書」は、他にも、こんな呼び方をされることがあります。
「特別受益証明書」
「相続分皆無証明書」
「相続分不存在証明書」など。。。
呼び方は様々ですが、このような書類に署名・押印する場合には、十分注意しなければいけません!
この「相続分のないことの証明書」は、複数人いる相続人の中から1人の人に遺産を引き継ぎたい場合に多く利用されるものだからです。
「相続分のないことの証明書」に署名・押印した人は、「私は亡くなった方から生前に多くの生前贈与をもらってきました。
ですから、これ以上亡くなった方から受け継ぐ財産はありません。」ということを、自分で証明したことになってしまうのです!
つまり、「相続分のないことの証明書」は、事実上「相続放棄」をしたことと同じなのです。
例えば、法務局の登記官は、相続人から「相続分のないことの証明書」が添付された不動産の「所有権移転登記」が申請されると、受理をします。
そうすると、たとえ「相続分のないことの証明書」に署名・押印した人が、実際には生前に多くの生前贈与をもらっていないとしても関係ありません。
本来、不動産の一部について相続人になれた人も、その相続分を受けることなく、別の誰かに不動産が全て相続されることになってしまうというわけです。
このように、「相続分のないことの証明書」を利用すれば、面倒な遺産分割の話し合い(遺産分割協議)をしなくても不動産の相続登記を行うことができてしまいます。
上記のとおり、手軽に相続放棄と同じ効果を得ることができるので、「相続分のないことの証明書」は乱用されやすいといえます。
内容を十分に理解しないまま、この証明書に署名・押印してしまった方が、後から遺産を取得できないことに気付いてトラブルになることも少なくありません。
相続人の1人から「相続分のないことの証明書」に署名・押印するよう求められた場合には、簡単に署名・押印してはいけないのです。
その内容をしっかり確認し、納得いかなければ遺産分割の話し合いを行うようにしましょう。
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