贈与税の相続時精算課税制度 第1回 〜 制度の概要 2018.3.28
今回から4回に渡って相続時精算課税制度についてご紹介していきます。 1年間に110万円の贈与であれば、財産をもらう人に贈与税はかからない、という話を聞いたことがある方も多いかと思います。これを税務上「暦年課税贈与」と呼びます。 贈与税には、「暦年課税制度」と、もう一つ平成15年に創設された「相続時精算課税制度」という制度があります。 暦年課税贈与は財産を贈与する(=あげる)人が誰かを問わず、財産をもらった人の贈与を受けた財産の価額が年間110万円を超えるか否かで贈与税の申告の要否が異なります。 対して、相続時精算課税制度の場合には、贈与する年の1月1日において65歳以上である贈与者が、その推定相続人である直系卑属(同じく1月1日において20歳以上である人)に対して行う贈与について、選択適用を要件に受けることができるものです。(近年の改正により贈与者の年齢は60歳以上に引き下げられ、財産をもらう人には推定相続人でない孫も含まれることとなり、適用対象者の範囲が拡大されました。) もう少し具体的に制度の概要について説明しますと、この制度を選択すると、例えば、父から子への贈与については、原則として2,500万円までの贈与については贈与税の負担なく、財産の移転ができます。この2,500万円というのは、1組の贈与者・受贈者間の一生分の控除限度額です。2,500万円の特別控除額を超える贈与については一律20%の贈与税が課税されます。 控除額以内であれば贈与税の負担がない代わりに、贈与者、今回の例の場合ですと父に相続が開始したときに、父の相続税の計算に精算課税贈与分の財産の価額を含めないといけません。 要するに、税務上は相続の前倒しとも言える形で、贈与税・相続税を通じて納税していく制度と言えます。 制度創設の狙いとしては、親世代から子世代への「財産の早期移転の促進」があります。国としては世代を通じて、財産を蓄えてもらうよりも消費を促したかったのでしょう。適用対象者の範囲を拡大し、より若い世代への財産の移転を認めたことなどからもそういう国側の意図も見てとることができます。 次回は、相続時精算課税制度の注意点についてご紹介します。