贈与税の配偶者控除 2018.12.19
夫婦間で居住用不動産、又は居住用不動産の購入・その建築資金を贈与したときは、2,000万円までは贈与税がかからないという贈与税の配偶者控除という制度があります。
配偶者は相続においても贈与においても税金面で、他の相続人に比べると優遇措置が設けられています。
贈与税の配偶者控除もそのうちの一つで、夫婦間の財産形成は夫婦の協力によって得られるものであることや、夫婦間の贈与は配偶者の老後の生活保障を目的とするものであるという考え方のもと、夫婦間の贈与について負担を軽減する意味で優遇措置が設けられています。
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最大2,000万円まで控除(配偶者控除)できるというものです。
適用要件は以下の全てを満たすことです。
(1) 婚姻期間が20年以上である配偶者から受けた贈与であること
(2) 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
(4) 過去に同一の贈与者からの贈与について、この特例の適用を受けたことがないこと
この規定の適用を受けると基礎控除と合わせて、最大で2,110万円の財産を税負担なく贈与することができます。
この規定の適用を受けずに2,110万円を贈与したとすると750万円の贈与税が掛かることを考えれば、節税効果はかなり大きなものです。
また相続開始前3年以内に行われた贈与については相続財産に足し戻さなければならない生前贈与加算についても、贈与税の配偶者控除を受けた財産は対象外となります。
相続開始前3年以内に贈与した場合でも、相続財産が増えることはありません。この点についてもメリットといえそうです。
その他にも、居住用不動産を配偶者に贈与し夫婦の共有財産にしておくと、「マイホーム(居住用財産)を売ったときの売却益に対する譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例」を夫婦二人とも適用できるので、合計6,000万円の売却益まで税金が掛からないことになります。
しかしメリットもあればデメリットももちろんあります。
相続税ではそもそも、配偶者が財産を取得する場合は、法定相続分に応じた財産分又は、1億6,000万円までは相続税は課税されません。その為、財産がそんなに多くないのであれば、生前に慌てて贈与する必要は無いといえます。
贈与により不動産を取得した場合、贈与税とは別に不動産取得税と登録免許税が課税されます。贈与税の配偶者控除の適用を受けて贈与税が掛からない場合でも不動産取得税と登録免許税は課税されることになります。しかし相続で不動産を取得した場合は、不動産取得税はかからず登録免許税も贈与の場合よりも少なくて済みます。
他にも、相続で取得した宅地は「小規模宅地等の特例」を受ける事が出来ますが、贈与で取得した宅地等については、この規定の適用を受ける事は出来ません。
特定居住用宅地等の場合は80%の減額になりますので、この規定を使うのと使わないのとでは、かなりの差が出てきます。
贈与税の配偶者控除はとてもお得な制度に思えますが、人によっては余分な税金を支払っただけという結果になることもあります。
とはいえ、しっかりと制度を理解し活用すれば節税効果を生む事もあります。よく分からないからといって何もしないよりかは、一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。