養老保険の取り扱い 2019.6.17
保険にはさまざまな種類がありますが、今回はその中の養老保険についてお話ししていきます。
養老保険とは、死亡保険金と満期保険金が同額の保険をいい、被保険者が亡くなった時の残された人に対する保障と、保険事故が発生することなく無事満期を迎えたときの被保険者の資産形成を兼ね揃えた保険といえます。
また、満期を自由に設定することができるので、計画的な保険にしやすいというメリットがあります。
しかし、保障と資産形成の2つの目的があるため、他の保険と比べて保険料は割高になるというデメリットもあります。
養老保険に限らず、保険に入るときは、その保険の特徴を理解したうえで加入するようにしましょう。
養老保険の税務上の取り扱いを見ていくと、死亡保険金・満期保険金を誰が受け取るかによって、処理が異なります。
ここでは、法人が契約者である場合のパターンを見ていきます。
パターンとしては
死亡保険金:法人 満期保険金:法人(以下「パターン1」という)
死亡保険金:被保険者 満期保険金:被保険者の遺族(以下「パターン2」という)
死亡保険金:被保険者 満期保険金:法人(以下「パターン3」という)
死亡保険金:法人 満期保険金:被保険者(以下「パターン4」という)
があります。
パターン1に関しては、いずれも法人が受け取るものであり、将来の法人の資産を積み立てているという考えから、保険料は全額資産計上という処理となります。
パターン2は、いずれも被保険者(社員)のために、法人が保険料を肩代わりして支払ってあげているという事から、保険料は全額費用という処理となります。
しかし注意しなければならないこととして、1つは支払った保険料は、社員の給与(役員の場合は役員報酬)として処理することになっているため、保険料(給与)に対する源泉税を支払う必要があります。
もう1つは、保険に加入しているのが特定の役員のみとなると、会計上役員報酬として費用計上しますが、税務上は損金不算入となってしまうという点です。
税務上も費用として計上するためには、社員全員が保険に加入している(福利厚生の一環である)という要件が必要となってくるので、注意してください。
パターン3は、被保険者が死亡したときの生活保障(福利厚生)と満期到来時には会社の資産を積み立てることになるという2つの意味合いを持つため、1/2を費用計上、1/2を資産計上することになっています。
パターン4については、実は税務上明確な条文がなく、一説によると全額損金算入が可能であるとも言われています。死亡保険金は被保険者の福利厚生として保険料として費用計上でき、満期保険金は被保険者の給与として費用計上できるという考え方もできないことも無いようです。
しかし、養老保険は生活保障と資産形成の2つの目的を持った保険であり、パターン3はその趣旨に基づいた保険であるといえますが、パターン4は被保険者の遺族の生活保障及び被保険者の生活保障のためと、いずれの場合も生活保障のための保険となってしまい、資産形成の役割を果たせていないことになります。
パターン2は、パターン4と同じく全額費用計上となっていますが、パターン2は被保険者や被保険者の家族の生活保障を目的としており、社員のための保険として取り扱うことができる一方、パターン4は法人が保険金を受け取ることができる場合もあり、法人のための保険という意味合いも出てきます。
パターン1は、資産形成のみの役割となり、生活保障の役割を果たしていませんが、将来に備えるという保険本来の目的を果たしています。
他の3つは養老保険に加入する合理的な説明ができる一方、パターン4は法人の節税を目的として保険会社が取り扱っていた時がありました。国税庁も、養老保険を法人の節税目的として取り扱うことを問題視しており、将来規制される可能性があるため、現在保険会社はこの取り扱いをやめています。
養老保険に限らず、保険の目的や仕組みを理解できないまま、保険会社が進めるままに保険加入していて、保険金が入った時に思わぬ税金がかかってしまったというケースは少なくはありません。
気になる保険があれば、当事務所でご判断いたしますので、ぜひお声かけください。